「中川裕貴」にインタビューしてみた

2017-04-16

ばきりノすの巣、二ノ巣に出演していただく、中川裕貴さんにインタビューしました。
今回もガッキーがインタビューしています。


— (G) では、まず自己紹介からお願いします!
(N) 中川裕貴と言います。三重県松阪市出身。大学で京都に来て大学院も京都。仕事で名古屋と東京を経て 2012 年の2月に再び京都に戻ってきました。それ以降はずっと京都で活動をしています。楽器はたしか 2008〜9年くらいまで エレキベースをやっていて、それ以降はチェロで大体 7,8 年は演奏しています。チェロにマイクやエフェクターを繋 ぎ、増幅・変調した音を使ったり使わなかったりしながら演奏しています。バンドは今ちょっと休んでいますが「swimm」 と、自分の「中川裕貴、バンド」というのをやっています。あとはバンド活動以外にダンスや演劇の舞台音楽とか舞 台での生演奏とかを演っています。大きな流れでいうとこんな感じで活動しています。

— (G) ありがとうございます。では、いきなりやけど(笑)音楽を始めたきっかけを教えてくださいー。
(N)めっちゃ遡ると、僕の母が音楽の先生で。でも、僕は基本的に音楽が嫌いやったんです。ちっちゃい頃、泣きなが らリコーダーの練習を延々とさせられた記憶があって今でも覚えてて。それで音楽は嫌いやったんですけど、まぁ、 アホみたいな話で TV で L’Arc〜en〜Ciel の花葬 という曲のプロモを見て、眉毛を剃り落とした Hyde を見て、なん かいいなぁって思いました。そこから音楽に興味を持って聴くようになったのが基本かと。それから中3ぐらいでエ レキベースを買ってもらって、そこから高校入ってバンドとかやらずに(やれずに)家で適当に音楽を流して特に合わ せるでもなくただ演奏している時期がありました。大学入って、最初はバンドをやろうとしてて、あんまりこれ言い たくないんですけど、最初は Oasis とかコピーして歌ってたりしてました。

— (G) そや、ボーカルやってた時期あったんやもんね!
(N) Oasis の『Don’t Look Back in Anger』をやってました(思い出すだけで具合が悪くなります)。あとそれと並 行して、さっき言っていた通り一人でやっていたので楽器がまともに弾けなくて、当時同じような人たちと集まって 「N.O.N」という名前でノイズと言われるような音楽/トリオバンドを始めました。他には「swimm」という今も続 いているバンドをフッキー(吹岡君)と始めたのが大体始まりかと。なので、音楽としての始まりは L’Arc〜en〜Ciel を聞いてベースを買ってというのがきっかけ。

— (G)「swimm」や「N.O.N」は指向性が違うように感じるやけど、最初からどちらもやってみたいー!で始まったのかな。
(N) ちょっと時期はずれるんですけど、「N.O.N」やってて、「swimm」は最初、歌とノイズというか雑音みたいな音 と一緒に朗読とかをやっていて、僕のやっていること自体にはそんなに大きく変わっていないかもしれないんですけ ど、相対するものというか、一方は歌でもう一方は全部雑音というか、、。
それぞれ相手が違うだけで、そこまで大きな違いは自分の中ではなくて、ただ「歌」とやっているという切り分けはあったと思います。正直言うと他にもバンドはやってたんですけど、主要なのはその二つでした。始まりは明確なコンセプトがあったわけではなく、やろうと言われてからやって進めてきたみたいな感じで。後々、だんだんとこう言葉とは、詩とはーとか、即興やそういうものを意識しだしたっていう感じに思いますね。

— (G) ラルクに憧れて Oasis のコピバンもやって、でも「swimm」始めた時には pop な音楽からではなく、あえてノイズや雑音と歌を入れるというのは、何か影響されるような人や音楽があったのか、それとも最初からこんな風にやりたい、面白いと思って始めたのかな。
(N)うーん、そうっすね。多分それは、今も通底している部分なんですが、「出来ないのにやっている」っていう、そ れが今も続いている大きな理由のひとつです。
そもそも楽器がちゃんと出来なかったので、ちゃんと弾けないし、ラルクのコピーも楽譜を見て挫折したんで、「なんだこの難しいの、、、」って。でも、出来ないなりにそれでもやりたいって気持ちが勝ってて、その勢いで最初にやったものが、なぜか今も大して変わらず続いているっていうことが 一番大きいかもしれないですね。多少は成⻑した部分もありますけど、なんか常に根底にあるものは、出来ないとか 一見、あまり意味がないというか、間違っているみたいなものを大して反省もせず続けると言うスタンスがあるんだ と思います。

—  (G)できないから諦めるのではなく、
(N)京都へ来たらみんなめっちゃ音楽が詳しくてショックを受けたんですけど、すぐやりたいと思ってもそういうのが 最初からできる訳でもないし、やりたいと思って真似したこともあるんですけど、どうなんでしょうね、、。なんかそういう感じでした。ガキさんは最初音楽をやり始めた時、目指してるものがあって、それに似たような感じで音楽を始めましたか?僕は結構むちゃくちゃやったんですよ。あ、でもノイズとかは好きなのがたくさんあって、それは 真似してたのかな。

—  (G) ばきりでいうとブルガリア⺠謡っていうわかりやすいコピーしたい音楽があった。楽器をどっちもできひんから、 自分たちの声だけで何する?みたいなところ。で、声だけで何をしたらおもろいんかな、みたいなとこから始まって るなー。音大とか出てるわけでもないし、好きなことをやり続けるみたいな。
(N) そうですよね、僕は最初コピーすら出来ないっていう状態やったんで。まぁ、ノイズとかやと抽象的なものを抽象的に見せるというか、そういうところから始めたのかな。あと、多分、大学も音関係の勉強がしたくて受験して京都に来たんですけど、音に対する熱意みたいなものはあって、そういうのに後押しされて出来ないのにやってたんじゃないかって思います。

— (G) 大学4年間は音に対する研究に取り組んでたのかな?
(N) 3年生ぐらいからは研究室に入って研究はしてました。大学と大学院は、僕は違うところに行ったんですが、大学は同志社で大学院は京都市立芸術大学。
大学の時の研究は噛み砕いて言うと、ある音楽/音の流れが終わるみたいな、 そこに対して人間は期待があると思うんですが、その終わることへの期待/感覚(終止感)が、どういう風にヒトに備わっているかっていう研究を大学をしてました。心理実験とかしてましたね。大学院はもうちょっとややこしいと いうか広い感じで、例えば今僕たちは、周りが喋ってたりとかしている環境にいると思うのですが、その音の情景分析みたいな感じで。僕たちはどこで何が鳴っているかとか聞いて判断してると思うんですが、聴覚がそれをどのよう にで処理しているとか、もっと言うと電話で話しているだけで、そのヒトが男の人や女の人、子供か大人とか、もっ と言うと身体が大きい人か小さい人かわかると言われているんですけど、その能力がどんな風に聴覚に備わっているかについて研究をしていました。

— (G) なるほど、面白いなー。ありがとう。話をちょっと戻すと、大学出た後も研究と並行しながら「swimm」と「N.O.N」 ずっとやってたんやんね?
(N) そうですね、「N.O.N」2012 年ぐらいまではやってました。そっからはみんな、どっか行ったり、就職したり。 このバンドは半分冗談で 666 年後に再結成するっていう話になってるんですけど(笑)。「swimm」は今、止まってますが断続的にやっているって感じですかね。

— (G) 音の研究をしたことで音作りに何か影響とかはあるのかな。
(N) よく聞かれたりします。でも、直接影響するってことはそんなにないんですね。僕の研究はいわゆる音や認知の基礎的なところで、それは作曲とかに使えるわけではなくて、音はこういう風に聞こえるとか、音が聞こえる時の仕組みの方だったので。ただ曲を作る時に何かしら反映されてると思います。僕が今やってる中川バンドに少し関係する のですが、心理学って音を聞かせる前にこうしてくださいとか言ったりすることがあります。そういう言葉によって 認識/鑑賞態度が変わったりする。
例えば、今、ここで言うなら、あの店員さんの音を意識してくださいって言うと言われたヒトはある程度はそういう状態になるじゃないですか。伝えることによって認識が変わるみたいな。専門用語だとプライミング効果っていうんですが(ちょっと微妙に意味が違うかもしれないですが)。言葉とか、心理実験で用いてたプロセス、つまり音楽に言葉を与えるみたいな部分は、今の中川バンドは影響うけてるかなーと思います ね。

— (G) なるほど!えと、音そのものも研究しているのもあるし、音楽を続けているスタンスとかは、大学卒業したからやめるとか途中でストップしようとか思ったことはないやんね。
(N) そうですね。就職して名古屋へ行ってたんですけど、2010年から2012年は名古屋、東京で、さすがにそこはちょ っと減ってるんですけど、それでも続けてましたね。あれはなんやったんでしょうね。意地みたいな。

— (G) よぉし、やってやるぞーみたいな(笑)
(N) あの時期はめっちゃ意味もなく、サラリーマンで、あ、今もサラリーマンですが、結構ちゃんとした会社にいて、 僕、練習のためだけに、家にタクシー呼んで名古屋駅まで行って新幹線で京都駅に行って、そこから今出川までタクシー乗って、それ、スタジオ練習だけなんですけど、そんなんやってました。今、考えるとその金、全部返せって思うんですけど(笑)

— (G)社会人やし、お金あるし〜やね!
(N) むちゃくちゃでしたね。なんか音楽はずっと辞めなかったですね。ただ、このままでは音楽やばそうって思ったのもあって、前の仕事を辞めたんですが、何か音楽はずっと続けてますね。めっちゃ好きっていうよりは、考えるのがそればっかりやったんで。そういうこととかをずっと考えたりしてきたっていうのが続いている理由なんかもしれないですね。今のところ。

—  (G)うんうん。話変わるけど、今、「swimm」は休んでるけど、その中でやりたかったみたいなこととかこういう感じで取り組んでたって要素ってなんだろうか。
(N) もちろん、色々テーマを持ってやってるんですが、「swimm」で言うと、言葉・歌があって、伴奏というかそれと は別の音があって相互にやるじゃないですか。言葉も音ですが、その二つ(言葉/歌と伴奏/楽器の音)のバランスというか、折重なりみたいなものについて、自分が新しいと思えるものを作っていくというか、今、この時点であっ てもいいんじゃないかって思えるものを開発するみたいなものはありますかね。それは他のバンドでも今、こういう音楽があってもいいんじゃないかって、こういう状況を僕が作ってもいいんじゃないかっていうのをやるっていうのは、多分、一個の目的になっているというか、多分、そうでもしないとやっている意味がないという部分もあるので。そうでもしないと、別に「いい音楽」をやっていると思っていないので、そういうコンセプトを自分に課すみたいな、 それでモチベーションを保たせるみたいな感じですかね。

—  (G)じゃぁ、ソロはいつから始めたの?
(N) ソロは浅利さん(SJQ のマネージャー)の奈良で運営されていた sample white room が 2010 年か 2011 年ぐらいまであって、多分 2007 年か8年に「中川君ソロでやってみたら?」って言われて、そんな感じで奈良でやらしてもらってて、その頃、自主企画みたいなものをはじめて、「o/t/c/」っていう。その辺からソロでやることを始めていったという感じです。
未だになんでソロを始めたかがあんまりわからないんですけど、おそらくソロやってみたらって言われ たり、一人でもできるやんって思ったことがあったからやと思います。

—  (G)ソロの時のライブの時ってどんなスタンスやったりするんかな。
(N) 日によっても違うし、まちまちなんですけど、なんて言ったらいいんかな、まぁチェロを使ってやるんですけど、 バンドの時は曲も決まってて、今やってる中川バンドもそうなんですけど、構成はほとんど決まってるんですけど、 ソロはもうちょっとラフな感じでやってて、基本はモチーフとか、できることが何個かあるんですが、それを組み合わせながらある程度即興でやっていくみたいなのが、まず一つあります。結構ガチッと全体構成を決めてやる時もありますが、バンドでやってる時よりはラフな感じで自分でその都度判断してやってます。
だから、音楽を始めた時の 即興の適当さがベースになりながらやってるっていう感じですかね。バンドの時も同じような意識でやってるんですけど、ソロの時の方が言い方悪いですけど
博打みたいな感じでやってます。

—  (G) 博打(笑)
(N) 日記に書きましたけど演奏は賭博なんで。失敗してもあぁーって思うし、成功すると「これやから買うのやめられ へん」って思うし(笑)。それくらい僕はだらしない感じでやってるんですけど。その瞬間が面白くて、僕あんまりCD 作るとか音源作ることに興味がなくてやってるんですね。その瞬間に何が起こせるかとか、演奏行為の方がはるかに好きで。起きてしまった以降は興味がないというか、その瞬間にやってその瞬間に消えるみたいなのが好きですね。賭博というか。

—  (G) その一瞬、一瞬みたいな
(N) そうっすね。僕、最近、競馬めちゃくちゃ好きなんですけど、気の狂ったくらい競馬の事しか考えてないんですけ ど(少し落ち着きました)、どれだけ準備してこれがくると思って、でも1分か2分後には結果が出てて、その後にはもはや何も変えようがないという、演奏も同じようなところがあって演奏していい音が出ても悪い音が出ても何秒が後には消えちゃうし、そのどうしようもなさみたいなのがやっぱりいいですね。

—  (G) 男のロマンみたいな感じなのかな。
(N) そうですね、最近はダメな大人の階段を上っているような(笑)。適当というか、そういうところがありますね。人には緻密に思われているようなところがあるんですけど、曲とか。でも、全然そんなことなくて、博打打ってるだけみたいなそんな状態なんです。

—  (G) 中川君が企画しているフライヤーとか見ると、ものすごく言葉数も多くて、それこそ緻密さを感じずにはおられへ んって感じやねんけど、イベントそのものに行ってみると、案外わかりやすいというか、すんなり楽しめる気軽さみたいなのを感じる。
(N) その辺、問題ありますね(笑)言葉を研究してたから、言葉が好きなんでしょうね。自分の文章は必然的に⻑くなっ てしまいますね。これは自分でも鬱陶しいって思っています(笑)。
言葉は言葉であって現実に起きるアクションみたいな、演奏で起きることとか、僕はかなりオープンというか適当ではないけど、その瞬間、出たとこ勝負というか、 曲とかもそうなるようにあえて雑に作ってるとことか、起きればいいねみたいな。それは決まってることもあって、 決まってないところもたくさんあって、他の演奏者がその時に変わったことをしてくれたらいいなとか、他人のこととかわからないんでそれぐらいにしておいて、なんかあったらいいなみたいな。クラシックの作曲家からするとお前 ふざけんなーって感じやと思うんですけど、言葉は言葉として考えていることは厳密に定義して、台本とかも書くん ですけど。そこはしっかり決めておいて、あとはもう起こったことに関しては、ある程度、何が起きてもいいかなっていう気持ちで、まぁ僕も演奏に参加するんで。作曲家とかじゃなくて自分もその輪に入るんで、言葉と実際の感じはちょっと違うじで取り組んでいるというか、2015 年隔月で行った
結音茶舗の企画は準備が大変でしたけど、いい機会でよかったです。これまでしたことのないことを取り組んだので。またやりたいですね。

—  (G) うんん、またやってほしい。トークイベント!
(N) あんまし需要ないと思うんですけど、またやりたいですね。最近は CD作ったり、ライブで忙しかったので。来年以降やりたいです。

—  (G) 最初に自分が完璧に出来ない事に対して抗っている話のこととか、中川君のライブや音楽を聴いたり、見たりしていると、攻めてるなーとも思うし、一見、小難しそうに見えて、現代音楽の難しすぎる部分や狭すぎるところではな くて、間口の広さもちゃんとあって、なんかこうむっちゃ新しいところまで飛んで行かず、でも中川君にしか出来な い事をきちんと集約されて音楽をしているように感じるんだけど、どうかな。
(N) 確かに。ただその「新しい/自分は新しいことをやっている」という認識自体は自分の中では少し変わってきていますね。広告代理店風に言うと「これが時代の最先端です!」みたいな感じ。もう歳だし無理というか、そういうのはある程度諦めるというか。今考えているのは、これまでやられてきた音楽と先端ではないけれども、ちょっと先に進んでるようなものの間を手をとってつなぐみたいな、それが且つ音楽として価値があり、意味があるものを提出す るみたいなことに興味があります。
最初は現代音楽とか、時代の最先端を作るんだっていう熱がすごくあったんですが、じゃぁ、今は何が新しいかって言うと何も新しくないじゃないかって言う思いもあるし、そういう意識じゃなくて、 なくなったものとかかつて在ったであろうものとか、そういうのと今をつなげる作業を今はしたいのかなって思ってます。
例えば、今、中川バンドでアルゼンチンタンゴを作ってるんですが、それは何というか、そういうことなんやと思ってます。基本的には古い音楽ですけど、僕は今この音楽がすっごい好きで。完全な最先端でなくて、過去から何かをもらって、もう一回それがゾンビやろうとなんとか蘇生させるみたいな思いがあります。その辺が面白いって思ってくれる人がいてくれて、そういう人が少ないながらもちょっとずついることで続けていけてるというか、自分のやっていることは大ハズレやないんやなって。

—  (G) 中川バンドの新譜はいろんな方向からの感想がありそうやね。
(N) いろんな方からコメントいただいて、すごい嬉しいコメントもあって、その中でも虹釜太郎さんのコメントが 2000 字以上あって気狂うなみたいな(笑)。
僕はあれを読んで作ってよかったと思いました。一番聴いてもらいたかった人 にお願いをして聞いてもらい、コメントを書いていただけたので嬉しかったです。まぁ、もちろん挑戦的というか、 普通の音楽をやれているわけではないので、ある意味神経を逆なでするよな側面もあるんですけど、それがガキさんが言っているように小難しい音楽とはちょっと違うというか。

—  (G) えと、なんかすぐにずらしてくるように感じるねんなー。小難しくなりそうな瞬間にパッと変わるみたいな
それがすごい聴きづらいって気もしなくて、ちょうどいいような。
(N) そうですね、自分の活動をすごい雑に言うと、中華のオードブルあるじゃないですか、あの円卓をずっと回してい るような感じですかね。これは激まず料理じゃないかって言うとすぐ次に回して。

—  (G) うんうん、音の切り替わる瞬間が絶妙な気がする!
(N) あの、さっき言ったように即興やったり、スイムやったり、演劇やダンスやったり、中川バンドやったりしてるん ですけど、色々やってなんかこう不安定な状態が続いているんですが、意図的というか「私はこういう人です」っていうのをならないように回転させていて、落ち着かないようになるべくしてます。何やっている人かわからんっていうのは至極同然のところがあって、あえて「中川君はそういう人だよね」っていうのをなるべく思われないように、 ずらしてずらして切って、ずらしてみたいなことを永遠にやり続けたいなって思ってます。
自分は飽き性なのでそうしないとすぐに飽きるし、っていうところがあるかな。編集にもそういう癖があって安定する前にずばっと変えたりしてます。

—  (G) うんうん、中川君は軸がしっかりしていて自己客観能力というか俯瞰している力がすごいあるように感じる。 (N) どうなんでしょう(笑)それは多分、大学で心理学とか研究や実験をしてたおかげかもしれないですね。主観を排す るみたいな。でも、演劇をやったことが大きいかもしれないです。烏丸ストロークロックという劇団についてずっと やってるんですが、稽古の時とか演出のそばにいて人を外から動かすみたいな視点をずっと見ていたので、それの影 響は大きいですね。まぁ、ライブの時は僕は中にいることがほとんどですけど。客観的なところは研究と演劇の影響 が大きいような気がしますね。

—   (G) 演劇の場合は、当たり前なんやろうけど、演出の人はものすごい大人数の人を采配して指示したり、まとめたりし なあかんもんね。
(N) そうですね、すんごい繊細なところがあります。

(G) 中川バンドではどんな感じかなー。
(N)音楽的なところは余白を残して、おまかせしている部分が大きいです。みんな、それぞれちゃんとしたミュージシ ャンなので。構成はかなりきちっと決めますが、出来事と出来事の間みたいな部分はおまかせしたり。そのなかでいろいろするのは本人のタイミングに任せたりすることが多いです。中身の模様は何でもいいよって。ただ⻑さとかは 決めまっせみたいなことが多いです。良いとか悪いとかはたまに言いますが、まぁ、僕、音楽、そんなにわかってな いんで(笑)他の人の方がわかってるからある程度まかせています。

—  (G) アルバムを出して、今はひと段落かな。
(N) あのアルバムの制作は 2015 年までに作ったものなので、今までのものをまとめたかなーっていうのと、さっき話 したように、今はタンゴを作ったりとか、既存の音楽との関係性を考えてやっているので最近のライブではもう少し 音楽をやっている感じが強いですかね。 今回のアルバムが音楽とちょっと距離を置いてやる実験やったとすると、今度は音楽の背後から音楽にタッチするよ うなイメージでやってるんですけど、年末くらいには一個大きな舞台をやろうと思っていて、それでまた今とは違う 方向性をみんなに見てもらえるかなーとは考えてます。

—  (G) アルバムを再現するみたいなライブは今回限りですってライブ告知に書いてたけど、
(N) もちろん、オファーがあればやるんですが、今は次の方に向かっていて、もう少し「音楽」がやりたくて。過去の 音楽と今の音楽のつなぎ目を探すみたいなことをやりたいんじゃないかなって。音楽がちょっとわかってきたという か、若干近づいてきた感じがあって。今までそれでようやってきたなーなんですけど(笑)

—  (G) 近くっていうのは、自分の中で音楽に対してちょっとだけ謎が解けたような。腑に落ちたみたいなところなのかな。
(N) 普通の人なら、そんなことやらんくてもすぐに分かったと思うんですけど、CD とか作ったことで音楽がどんなも のか、またどういう風にヒトが聴いてるとか、なんか少し腑に落ちたというか身体に染み付いたということがあって。 それがあって、音楽作ってみようかっていうモードになりました。他はタンゴがめちゃくちゃよくて、それに出会ったというのも理由の一つなんですが、試した中でファーストの CD は音楽に対して自分がどれだけ逸れていけるか、 タイトルもそうなんですが、「音楽と、軌道を外れた」っていう。どれだけ「音楽」から逸れていけるかみたいなものを試した感じ。そうすることで音楽が何か少しわかったっていうことで、音楽が作っていけるかなって、10 年くら いしてやっと音楽に辿りついたみたいな。お前は⻲かっていう感じなんですけど(笑)それは4月にやるソロライブも全然関係ないわけじゃなくて、その日も音楽やるんじゃないかなって思います。

—  (G) じゃぁ、そこに向かっていく形としてはソロであったりバンドであったりなのかな?
(N) そうですね、ソロは去年、大きい企画をやって、僕は機械を使うんですけど、今やったことがコピーされていく、 それは電子機器/ループを使ったらそうなるけど、そういう繰り返し/コピー/音の分身といったようなことを解釈するためのライブをやったんです。まぁ、ソロはソロでバンドで出来ない事ももちろんあって、今は音楽のモードなのでバンドの方がメインになりつつあるんですけど、ソロとか演劇とか、それはやっぱり大事というか、多分スパンがあってそっちで見えたものがバンドに行って、バンドで見えたものがソロに行って、ずっとそれの往復でやっているので、今はバンドなんですけど、ソロももちろん考えている事はあるので。

—  (G) ソロは演劇も含まれるし、そういう意味ではそこも相互作用があるもんね。今はアルバムも完成し、次に向かっていく方向もあり、絶好調みたいな時期に見えるね!
(N) どうなんでしょうね(笑)状況としてはすっきりしてしまって本当によかったのかなってところもあるし。

—  (G) それは最初に話していた音楽に対するもやもやというか、そこの部分かな。
(N) うーんと、いわゆる「音楽とは?」という路線もまたやりたいとは思うんですけど、僕、天邪⻤なんでこんなに簡 単に屈していいのかって。音楽をもっと破壊したい、無碍にしたいって思いがずっとあるんですけど、今はタンゴが 好きなんで、その思いを隠しつつ、作るみたいな。また、どうせすぐ嫌いになると思うんで(笑)—  (G) 幼少期のリコーダーで叱られた悪い思い出と同じように嫌いになっちゃう(笑)
(N) そうですね、またフラッシュバックして(笑)大切なものを目の前で破壊するみたいな感じがあるかもしれないです ね。まぁ、ソロはそういうところはありますね、やっててすぐ切っちゃう。今、気持ちいいと思っていますか、でも それは続かないみたいな。

—  (G) えと、お客さんに対してはどうなんだろう。
(N) 僕自身が切断ってことそのものが好きっていうのもあって。ずばっと切ってこの断面きれい!みたいな。

— (G) わぁ〜この断面めっちゃいいな!!みたいな。
(N) そうですね!居合切りみたいなことばっかりやってるんで。まぁ、最初に言ったように博打みたいな。賭けて終わ って、当たったか外れたか、その余韻みたいな。当たっても外れても呆然としてその時間を堪能するとか、そういう のが好きなんじゃないかなって最近は思いますね(笑)

— (G) そういうところが中川君の面白さというか、何をしてくるかわからない、なんか仕掛けてくるなみたいなのがある んやろうな。
(N) そうですね、タダでは帰さんっみたいなところあるんで。

— (G) サービス精神が旺盛やんね!
(N) そうですね、一応、基本的には親切設計を謳っているんで。

— (G) エンターテイナーみたいなところかな
(N) その辺が微妙なところですね。あんまりお客さんを意識しているわけではないんですが、自分の意識がそこに呼応する時はあります。まぁ、それくらいがいいかなって思っています。あとは親切なお客さんだったら自分で探してくれるだろうって。あんまり説明しすぎても仕方ないやろうって思う部分もあるので、ある程度、すき間風が吹くように作ってですかね。

— (G) えと、言葉でたくさん説明していたりするけど、ライブを見たら中川君がやりたいこととかが感じられるっていう のは当たり前なんだろうけど、そう思うなー。
(N) そうですね、僕は一番ライブがいいです。自分とマッチしているというか。CD では全部は伝えられないかなって 思いました。作ってみて。それは演劇の影響もあるんですけど、空間が作品であるみたいな。サウンドアートもすご い好きやし、鈴木昭男さんとか梅田哲也さんとかも好きやし。僕はライブでそういう空間を作るのが、一番大きなと ころかなーって。楽器を持って、時間があって、そこで何かをやるみたいなところですかね。

— (G) 中川君にとって、ライブをして、そこで対峙するお客さんというのはどんな存在ですか
(N) これは演劇やっていてすごく思うことがあって、これ、中々わかってもらえないかもしれないですが、演劇ってお 客さんのいないところでものすごく練習をしていて、お客さんを入れた時にはじめて、「あぁこのセリフ、こう言う 意味やったんや、、」っていう瞬間が僕は何度もあるんですよ。マジで。言葉と言葉があってその間のつながりみた いな部分が。話す相手と聞く相手が存在して初めて繋がる瞬間みたいなのがあって、それは聴くとか理解しようとか 目的を持った人がそこにいて、伝えようとする人がいて、別に会話しているわけではないんですけど意識のベクトル が合う時に初めて空間として「わかった!」みたいな瞬間があって、それがわぁっと思って、演劇で何度かあって。 僕もそれかなって思います。僕も大して pop な音楽は作ってなくて、お客さんが入ってきてそういう反応も含めた時に初めてぱちっと合うというか、それはそんなにたくさんあるわけじゃないですけど、そういう時があるというか、 それを目指していて、うーんと、それが必要ですね。まぁ、僕もお客さんをめっちゃ意識しているわけじゃないです し、お客様は神様やとは思ってないんですけど、必要な存在で、さっき言った瞬間を自分が見たいからかな。実際レ コ発でもそういう瞬間があって嬉しかったんですけど、それは同じ場所に人が集まらないと出来ない部分があって、 それは特に僕みたいな音楽はそうじゃないと出来ないんじゃないかなってところもあるので。お客さんの存在ってい うのはそういう意味ではすごく大事というか、演劇の経験もあってそういう風に思います。お客さんの前でやらない と分からないってないですか?

— (G) あるなぁ。練習してて、それがライブで初めて分かるみたいな。あと、私は家ではサウンドアートとかの音をゆっくり聴くことってしないんだけど、展示されたその空間で微細な音をずっと聴いたり気配を感じたりするのはめっちゃ好き。そういう時はここにずっとおりたい、聴いときたいっおもろいなって思う。空間そのものが好きみたいなところは今の話に通じる部分があるんやろうな。
(N) そうですね、同じやと思います。空間そのものが大事って思ってるんやと思います。

— (G) うん、では突然ですが、そろそろいい時間になりました(笑)
会場へ遊びに来る皆様へメッセージをお願いします。
(N) 僕、今回のイベント、一回目を拝見して、ちゃんと会場には美術や照明もあって、そこに合うようなライブをしよ うと思っています。価値のあるものになると思うので、ぜひ遊びに来てください。いい日になると思います!

(G)今日はありがとうございました。 (N)ありがとうございました。


nakagawa _picture by Naoki Fujita

picture by Naoki Fujita
中川裕貴 Yuki Nakagawa

京都市在住。楽器(チェロ)を持ち、電気を使い、作曲・演奏(拡声)・演出を行う。 バンド「中川裕貴、バンド」「swimm」などに参加。
その他、演劇作品の舞台音楽をいくつか担当。 此処数年は「音/音楽」の周辺に潜り・漬りながら、それら特有の正邪の存在を意識し、
演奏をもってその間を行き来すること、また「音/音楽」が持っている体系/倫理を部分的に 切断させ、その断面を眺めるということを行っている。
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